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問題だらけの刑事訴訟法改正

久しぶりのブログUPになりました。

私の所属している参議院法務委員会にはいま、刑事訴訟法改正案が審議を待っています。犯罪捜査や取り調べについての法律で、これまでにない大改正となる内容が盛り込まれていますが、安保法案の審議の陰に隠れてあまり注目されていないのが心配です。

改正はえん罪をなくすことを目指しているはずなのに、むしろ増えるのではないかという懸念が強まる内容になっているのです。取り調べる時の録音、録画が十分でないことや司法取引の導入、証拠リストの開示についてなど多くの問題がありますが、特に電話やメールなど通信を傍受するいわゆる盗聴の対象ややり方が大幅に広げられた点が最も気にかかるところです。

限られていた盗聴がほとんどあらゆる場合に認められ、また警察内で立会人も置かずに盗聴を行うことができるのです。つまり警察の中で勝手にいつでも盗聴をしようと思えばできるようになっており、プライバシーの侵害や報道の自由の侵害がふつうに行われるというところが最大の問題点と言えます。

8月21日の参議院本会議では、上川法務大臣の趣旨説明に続いて各党の質問が行われました。私も質問に立ちましたので、その全文をぜひ読んでいただき今回の改正がいかに問題だらけであるかを分かっていただければと思います。


(参議院本会議での質問全文)

維新の党、真山勇一です。ただいま議題となりました刑事訴訟法の改正案について、会派を代表して質問いたします。

【国民に広がる疑心暗鬼】

少し前まで「戦後最強」とまで言われた安倍政権の支持率が、このところ低下しています。なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。私は、国民の皆さんの心に広がる「疑心暗鬼」が最大の原因ではないかと思っています。

安倍政権にいまノーを突き付け始めた国民の多くが、「安倍政権は何をやるかわからない」と警戒し始めているように私には思えるのです。

無論、安保法制の議論は重要です。確かに外敵から攻撃されることは、とても恐ろしいことです。私達、維新の党は自国をしっかり防衛できるよう、法整備の充実を訴えてきました。しかし、人類の歴史を振り返ってみると外敵の侵入と同じか、或いはそれ以上に恐ろしいのは、自国の政府が暴走し、国民の基本的人権を踏みにじったり、制限することではないでしょうか。ソ連も、ナチスドイツも、中国共産党も、自国の人々に過酷な弾圧を加え、大きな災いをもたらしました。「戦争の世紀」となった20世紀、戦争で他国から殺された人は数千万にもなりますが、その一方自国の政府によって殺された人もまた、それに匹敵する数にのぼっているのが事実です。

だからこそ、イギリス、フランス、アメリカといった民主主義の先進国は一様に、権力者に暴走を許した過去の歴史を「教訓」として、政府に厳重な縛りをかけています。我が国もまた、戦前戦中の一時期、国民の基本的人権がないがしろにされた重苦しい時代を経験したからこそ、日本国憲法によって厳重なうえにも厳重に、政府の行為に縛りをかけているのです。たとえ、政治家や官僚の一人ひとりが「いい人」であったとしても、「権力」というのは「自己保身」、「組織の論理」、「その場の空気」といったものでどう暴走するか分かりません。つい最近だけでも、薬害エイズ、福島原発事故、年金記録、新国立競技場など、政府が迷走と暴走を繰り返し、国民の基本的人権が制限されたり、国民の財産が不当に侵害されたりしても、当局は責任をとろうとしなかったではありませんか。だからこそ、権力を行使する側にフリーハンドを与えてはならないと多くの国民が考えるのです。そしてそれが、私達、立法府の構成員、わけても「良識の府」と言われる参議院議員が、最も肝に銘じておかなければならない点ではないでしょうか。

時の政権の都合で憲法解釈をどうにでも変えるようになったら、それは薄暗い世の中と言わざるを得ません。権力者が「法的安定性は関係ない」と言ったり、「戦争に行きたくないというのは利己的」と決めつけたりすれば、いつ、基本的人権の定義まで「解釈変更」されるか分かりません。こうしたことを目の当たりにすれば、国民の不安は高まり国民の心に疑心暗鬼が広がるのも当然ではないでしょうか。ただいま議題に上がった刑事訴訟法改正案の審議においても、注意すべきはそこではないかと私は思います。私達、維新の党は衆議院において修正の上、本法案に賛成しましたが、参議院においても法律の中身、そして運用を厳密にチェックすべきと考えますので、以下、政府にお尋ねを致します。

【政府の基本姿勢を問う】

まず、上川大臣。「立憲体制を堅持する」とあらためてお約束下さい。憲法は言うまでもなく、権力者にフリーハンドを与えないように国民が政府に課した制約です。時の権力者に都合のいい形で「基本的人権」の解釈などを変更していいものではないということを、上川法務大臣、改めてご確認下さい。そしてその上で捜査、起訴、公判は全て「法と証拠」に基づいて行われ、不偏不党で、一切の政治性や恣意性を排除するとお約束下さい。国策捜査、政治裁判を許さないという立場に、今も変わりはないかお答えください。そもそも今回の改正は取り調べを録音、録画しいわゆる可視化を全面的に取り入れることによって冤罪を防止し、国民の基本的人権を守ることが目的でした。しかし、本改正案には通信傍受や司法取引の導入など、捜査当局の力を増大させる内容がずいぶんと盛り込まれており、かなり逆行する印象を受けます。

【取り調べの可視化について】

せっかくの取り調べ可視化も、本法案では捜査の対象となった事件全体のうちのわずか3%で認められるに過ぎません。可視化の対象は将来的には必ず拡大されると、改めてお約束下さい。また当然ながら、取り調べの最中に、捜査当局に都合良く機械が故障することなどあってはなりません。私は、録音・録画機器が故障した場合は、調書自体が無効になるくらい厳密にやるべきだと思いますが、大臣の見解はいかがでしょうかお聞かせください。

【司法取引の導入について】

司法取引も捜査当局に有利な制度です。司法取引の協議の過程で生じた重要な事項について記録、保管されることが付帯決議に盛り込まれましたが、これは法文に直接書き込むべきではないでしょうか。また、司法取引の事実関係は、義務として裁判官に示されるべきではないでしょうか。さらに衆議院での修正によって、司法取引捜査の対象は「同一事案の共犯関係」に限定されたと理解してよろしいでしょうか。違うのであれば、どこまでが対象範囲なのでしょうか。

【通信傍受捜査の拡大について】

通信傍受も同じように、捜査当局に大変に有利です。やはり警察署以外の場所、そして第3者の立ち会いのもとで行うのが公正なやり方のはずですが、できない理由は何でしょうか。基本的人権を守るためであれば、必要な人件費を通信事業者等に支払ったり、弁護士会など法曹関係者の協力をお願いしたりしてでも、客観性、検証可能性を担保すべきと考えます。まさか、人権よりお金のほうが大事などと考えてはいらっしゃらないでしょうが、いかがでしょうか。通信を傍受する際、どうしても第3者の立ち会いが不可能というのであれば、捜査当局内ではどのように客観性を担保するのでしょうか。私は、基本的に「身内のチェック」は当てにならないと思っていますが、それでもせめて警察の監察官など監察部門を充実して、通信傍受の全過程を検証する体制を整備するつもりはないのか。どうしても、第3者がチェックできないのであれば、通信傍受によって得られた「証拠」が、捏造、改ざん、編集されていないことを、裁判官や弁護人はどう確認できるのでしょうか。その確認ができる技術的な方式についてご説明下さい。

【証拠開示について】

また、証拠リストが開示されるのは裁判の公正性を確保する上で一定の前進であるとは考えますが、リストを作った段階で捜査当局に都合の悪い「証拠」が破棄されている懸念はないのでしょうか。さらに、もうひとつ政府に伺いたいことがあります。証拠の中に特定秘密がかかったものがあれば、それはどのように取り扱われるのかということです。テロ組織や外国勢力、反国家組織が絡む事件も、本改正案の対象になります。政権にとって都合の悪い人物に嫌疑がかけられ、捜査も裁判も特定秘密というベールで覆ってしまえば、簡単に冤罪が作り出されてしまうということを特定秘密保護法の審議の時から私達は問題提起し懸念を表明してきました。そのため、捜査及び裁判の信頼性を担保すべく、刑事訴訟手続き全般における特定秘密の取り扱いについて、政府には検討をお約束いただいていたはずです。現在の状況をご説明下さい。

 

法律をめぐってよく引用される言葉に、ドイツの哲学者ニーチェの次のようなものがあります。「怪物と戦う者は、みずからも怪物とならぬように心せよ。」政府に噛みしめていただきたい言葉だと思います。犯罪は当然ながら憎むべき「怪物」です。その怪物を退治するために、国民は政府に強大な力を与えています。しかし、その政府自身が強大な力を持った「怪物」になってしまっては困るのです。強大な力が決して時の政権の都合などによって、無実の国民に向けられるようなことがあってはならないということを確認させていただいて、私の質問を終わります。

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